こばなし参

状況がよくわからない政宗と幸村
憑/神ダブルパロ(佐助と幸村)
革命ダブルパロ(やりおった)



































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状況がよくわからない政宗と幸村


「やめればいいのに」

「…で?」
「言われたのでござる」

 厳かに茶器を回し口つけた幸村は、眉宇をいさめ、苦い。とのたまってくれた。
 天下の伊達者の点てた茶にそんな感想を漏らせるのはテメエぐらいだ覚えとけ!
茶主である政宗は脳裡を過ぎ去る言葉に苛立ちなのか闘争心なのかを覚えたが、 しかし当の幸村といえば、四季の一節を切り取った見目美しい生菓子を嬉しそうに 食べていたので呆れが勝ってしまった。味音痴ではなさそうだが、 こいつの甘いもん好きはどうにかならないのかと煙管片手に深く息をつきたい気分だった。

「武士を、やめてみよと。武人である某は捨てずともよいからと」
「………」
「前田殿に」
「アンタはどう答えた。真田幸村」
 睨みつける政宗は、しつらえた室の本来あるべき、心穏やかで厳粛な空気を容易く ぶち壊すのを迷いはしなかった。仕掛けたのはあっちだ、何が悪い。 相反する静寂は耳奥で甲高い音すら聞こえてきそうだった。例えば張り詰めきった弦のような。
「別に、どうも答えてはおりませぬ」
 しれっと答えた幸村の反応こそが政宗の求めた答えで、 今度こそ政宗は紫煙をくゆらせたいと強く思った。 こんな茶番に付き合わされるぐらいなら、刀をあわせていた方がどれほど気分が良いか。 自分達は言葉で語るよりも死線で語り合う関係だという事を忘れていた。

「OK、とりあえず表に出ろ。手っ取り早い」
「政宗殿は大名で武士で武人でござる」
「そういう鬱憤はどっかの迷彩にでも言っとけ」


珍しくイラッとしてる旦那と何だかんだで面倒見のいい筆頭。

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憑/神ダブルパロ


「今度は何神か?」

 面白そうに振り返り此方を見詰めてくるのは、そう経験にある事ではない。 経験云々の話しですらなく、手っ取り早くいえば初めてだ。こんな反応。
(もしかして厄介な御仁に当たっちゃった?)
二巡りの神が憑いたはずなのに、茶褐色の髪の男は血色も良いほうだし、 慎ましい生活を送っているのは見てとれるが苦しているようには見えなかった。 いくら能天気で気楽に生きる性質の人間に力が効きにくくても、もっと衰弱していていい筈だ。
(まさか、あいつら)
過ぎった心当たりに軽く頭を振ってみせるが、表面上はにこやかに対する。 人当たりの良い表情も、告げれば相対する者にとっては酷薄で怖気の走る姿に映り、 発狂するか諦念し命の灯火を揺らめかせるかのどちらかであった。

「貧乏神、厄病神ときたら――最後は死神。ま、諦めてくれよ」

 しにがみ、と動き半開きになった口が次第に口角を上げていくのを見て、 死神は気をやったかと思いかけたがそうではなかった。 不敵なまでに煌々とした生命力を漲らせる男は、元より六文を背負った時から 恐れてはおらんかったがと傍らから離さなかった槍を握り締め、
「どうやら天意らしいな。我が名は真田源二郎幸村にござる。して其の方は」
「……猿飛佐助」
「佐助と申されるか!なに、手を煩わせる事もないぞ佐助よ」
 目線の赴く先を佐助も追って、やたら血のにおいが纏わりつくのはこれかと唾棄したくなった。 埋め尽くすひとの群れ、規模の大きさに戦の文字が否応なく喉に張り付く。 手を煩わせないのは楽でいいが、それでは神としての役割が台無しだ。 好き好んでやっているわけではないが、それが佐助の任である。
「だがまずは腹ごしらえだな。お主も食うか?」
 場面にそぐわない甘い香りが漂ってきて、黙り込んだままの佐助は 予想が確信であったと知った。秘法を使うに至った二人の神は、 気負いなく甘味を頬張る幸村に何を見たのか。片鱗を見てしまった佐助も同じ道を辿るのか、 それとも。

「アンタは神を泣からしめるみたいだね、真田の旦那」
「ああ、小助と才蔵にも言われたな」


まさかの十勇士オチ。

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革命ダブルパロ


鐘が鳴る。荘厳な終わりの音が。
リィン

そんな、

ゴォン

旦那には、

リィン

旦那は俺がいないと生活能力皆無で、目の前でぶっ倒れたりして理由は 実にくだらない空腹が原因で、俺は飴やクッキーを忍ばせるようになって、 笑っていても好かれても憎まれても旦那は友達を作ろうとせず、 俺の花嫁だからと、決闘で打ち勝ったからだと、男が花嫁?頭大丈夫かと思ったよ、 普通の男子高校生に同じく男子高生が今日からあなたの花嫁です、エンゲージしなくてはなりません、 俺には関係ない、関係ない、関係ない!これで明日から「普通」に戻れる、 緩くて気だるい携帯の表示を眺めるだけの日々に!

ゴォン

「だん、な」

 なのに、頭を鷲掴みにされて脳みそぐちゃぐちゃにかき回されてる気分の悪さは何だ。
身体中から血が抜ける。違う、顔から上に集中して血が足りてない。 駆け巡る光景は、旦那が俺を佐助と呼んだ日の夕焼けや、 おずおずと菓子の催促をしてきた日の陽光。
ピントが合わない。 やたら男前な(男だが)性格をしている癖に、止めろと言えばピタリと止まる。 思えば、あれが初めての彼の意思だったのではないか。 佐助が頷いた時の幸せそうに笑った顔は、彼が、幸村が心の底では――

「さらばだ。猿飛佐助」

 剣が光の粒になって消えていく。立っていられず崩れ落ちる。
おれはなんて叫んでた?旦那には俺がいないと、俺がいなきゃいけない?
旦那も友達が欲しいだろ、そう望んでいる?俺、は、俺はおれはおれは!

鐘が鳴る。終末の音だ。



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 指輪に水がはね、ぴしゃんと軽い音と冷たさが体に響く。 背後で大量の水が流れ出し扉が開かれる様を幸村はただ眺め、 そうして森の中に現れた螺旋状の階段に片足を踏み出す。 真っ白だ。柱も柱のまわりに巻きついている階段も。
果てのない上空を睨みつけ、オブジェと言っていいアーチをくぐる。 傍観者のように佇んでいる佐助と目が合い、幸村は風に赤い鉢巻が 舞うのを感じた。

ご存知だろうか。決闘の始まりだ。


ウテナ→佐助 アンシー→旦那、とその逆で。KOYASUはすごいぜ

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